はじめに

外国人材を受け入れる企業や、育成就労での来日を検討している外国人本人にとって、「家族を日本に連れてくることができるのか」は大きな関心事です。特に技能実習制度では原則として家族帯同が認められていなかったこともあり、新しく始まる育成就労制度でこの点がどう扱われるのかを気にする声は少なくありません。

この記事では、出入国在留管理庁が公表している「育成就労制度Q&A」のQ59をもとに、育成就労制度における家族帯同の可否について、行政書士の視点から整理します。

育成就労制度における家族帯同の結論

出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(Q59)では、「育成就労制度では、家族の帯同はできますか?」という問いに対し、次のように回答されています。

「原則として、家族の帯同を認めないこととしています。」

つまり、育成就労制度においても、技能実習制度と同様に、配偶者や子どもなどの家族を日本に呼び寄せて一緒に暮らす「家族帯同」は、原則として認められません。育成就労という在留資格そのものに、家族を扶養家族として呼び寄せるための在留資格(いわゆる「家族滞在」に相当するような枠組み)は用意されていない、ということです。

この点は、育成就労制度の目的が「人手不足分野における人材育成と人材確保」にあり、外国人本人が原則3年間、就労を通じて技能や日本語能力を身につけることに主眼が置かれていることとも関係していると考えられます。制度としては、あくまで外国人本人が単身で来日し、一定期間の育成就労を経て特定技能1号へとステップアップしていくことが基本の枠組みとして想定されています。

「原則として」という表現の意味

Q59の回答は「原則として認めない」という表現になっており、「一切認めない」とは書かれていません。行政の公式回答でこのような表現が使われる場合、何らかの例外的な取扱いの余地が残されている可能性を示唆していることが一般的です。

もっとも、現時点で公表されている育成就労制度Q&Aにおいては、家族帯同が認められる具体的な例外要件や条件については明記されていません。したがって、現段階では「育成就労の在留資格を根拠に家族を呼び寄せることは、基本的にできない」と理解しておくのが実務上安全な考え方といえるでしょう。今後、制度の詳細な運用が固まっていく中で、例外的な取扱いに関する情報が追加で公表される可能性はありますが、現時点で確定的な例外があるとは言えません。

なぜ家族帯同が制限されているのか

育成就労制度Q&Aには、家族帯同を制限する理由そのものについての詳しい説明までは記載されていません。そのため、ここからは一般的な制度趣旨を踏まえた補足になりますが、技能実習制度においても長年、家族帯同は原則として認められてきませんでした。これは、受入れ企業や地域社会の受入れ体制、外国人本人の生活基盤の整備状況などを踏まえ、まずは本人単独での就労・技能修得を前提とする制度設計が取られてきた経緯によるものと考えられます。

育成就労制度は技能実習制度を発展的に解消して創設された制度ですが、家族帯同に関するこの基本的な考え方は維持された形です。育成就労が原則3年間という比較的短い期間の育成を前提とした制度であることも、単身での就労を基本とする制度設計と整合的といえるでしょう。

特定技能への移行後はどうなるか

育成就労制度は、3年間の育成就労を経て特定技能1号、さらに特定技能2号へとキャリアアップしていく連続性を持たせた制度です。家族帯同については、在留資格の種類によって扱いが異なることが一般的に知られており、特に特定技能2号においては、特定技能1号とは異なる取扱いがなされる在留資格として制度設計されています。

ただし、今回参照した「育成就労制度Q&A」のQ59は、あくまで育成就労の在留資格における家族帯同の可否を尋ねたものであり、特定技能1号・2号における家族帯同の詳細な要件について具体的な記載はありません。特定技能移行後の家族帯同の取扱いについて正確な情報を確認したい場合は、特定技能制度に関する別途の資料や、出入国在留管理庁が公表している特定技能関連のQ&Aを確認することをおすすめします。

受入れ企業・外国人本人が知っておきたい実務上のポイント

育成就労制度での受入れを検討する企業や、育成就労での来日を希望する外国人本人にとって、家族帯同に関して押さえておきたいポイントは次のとおりです。

  1. 育成就労の在留資格では、原則として家族を日本に呼び寄せることはできない
  2. 来日前の生活設計として、単身での赴任・就労を前提に考える必要がある
  3. 家族帯同を強く希望する場合は、育成就労とは別の在留資格の可能性や、将来的な特定技能移行後の取扱いについて、個別に確認する必要がある

受入れ企業側としても、外国人材に対して事前にこの点を正確に説明しておくことが、後々のトラブルやミスマッチを防ぐうえで重要です。「日本で働きながら家族と暮らせると思っていたのに、実際には帯同できなかった」という認識のズレは、外国人本人の就労継続の意欲にも影響しかねません。採用段階から、育成就労制度の基本的な枠組みとして家族帯同が原則認められていないことを、丁寧に伝えておくことが望ましいでしょう。

まとめ

出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(Q59)によれば、育成就労制度では原則として家族の帯同は認められていません。これは技能実習制度から引き継がれた考え方であり、育成就労が原則3年間の育成を目的とした制度であることとも関係していると考えられます。「原則として」という表現が使われているものの、現時点で具体的な例外要件は公表されていないため、実務上は家族帯同ができないことを前提に受入れ計画や来日準備を進める必要があります。

制度の詳細は今後さらに明らかになっていく見込みです。育成就労制度における在留資格や家族の呼び寄せに関するご相談は、外国人在留手続に詳しい行政書士までお気軽にお問い合わせください。