はじめに
外国人に自社の経営に参画してもらいたい、あるいは外国人自身が日本で会社を設立して事業を営みたいという場合には、「経営・管理」の在留資格が必要になります。この在留資格は、単に「代表取締役」や「役員」という肩書きがあれば取得できるものではなく、事業の実態や規模、経営者としての実質的な能力を確認するための具体的な基準が設けられています。
この記事では、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(平成2年法務省令第16号)に定められた、経営・管理の在留資格に係る上陸許可基準の内容を整理します。
経営・管理の在留資格に係る基準の全体像
同省令では、法別表第一の二の表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動について、申請人が次のいずれにも該当していることが基準として定められています。
- 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること(事業が未開始の場合は、事業所として使用する施設が確保されていること)
- 申請に係る事業の規模が一定の要件を満たすこと
- 事業の経営を行い、または従事する者のうち、いずれかの者が高度に自立して日本語を理解・使用できる水準以上の能力を有し、申請人が経営・管理に従事する時において本邦に居住することとしていること
- 経営管理に関する学位・専門職学位を有していること、または事業の経営・管理について3年以上の経験を有していること
- 事業の管理に従事しようとする場合は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
それぞれの要件について、順番に見ていきましょう。
要件1:本邦に事業所が存在すること
まず、申請に係る事業を営むための事業所が実際に日本国内に存在している必要があります。ただし、これから事業を立ち上げる段階でまだ事業自体が開始されていない場合には、その事業を営むための施設として使用する物件が本邦に確保されていれば足りるとされています。つまり、賃貸オフィスの契約が完了しているなど、事業所として使用できる状態を客観的に示せることが求められます。
要件2:事業の規模に関する基準
事業の規模については、次の2つの要件のいずれにも該当している必要があります。
- 常勤職員の要件:経営または管理に従事する者以外に、本邦に居住する常勤の職員(在留資格を有する外国人従業員を除く)が従事して事業が営まれていること
- 資本金等の要件:申請に係る事業の用に供される財産の総額(資本金の額及び出資の総額を含む)が3,000万円以上であること
これら2つの要件は「いずれにも該当」とされているため、常勤職員がいるだけでも、資本金が3,000万円以上あるだけでも足りず、両方を満たす必要がある点に注意が必要です。中小規模での起業を検討している外国人にとっては、この資本金要件がハードルになるケースも少なくありません。
要件3:経営陣の中に日本語能力を有する者がいること
経営・管理の基準では、事業の経営を行う者、またはその事業に従事する者(非常勤の者を除く)のうち、いずれかの者が「高度に自立して日本語を理解し、使用することができる水準以上の能力」を有している必要があります。そして、申請人が実際に当該事業の経営・管理に従事する時点において、その者が本邦に居住することとしていることも求められます。
これは、経営陣の中に、日本語での意思疎通や行政対応、取引先とのやり取りなどを適切に行える人材が確保されていることを担保するための要件と考えられます。申請人自身がこの要件を満たしている必要はなく、共同経営者や役員の中にこうした人材がいれば足りると読み取れます。
要件4:学位または経営経験
申請人自身については、次のいずれかに該当していることが求められます。
- 経営管理に関する分野、または申請に係る事業の業務に必要な技術・知識に係る分野において、博士・修士・専門職学位(外国での取得分を含む)を有していること
- 事業の経営または管理について3年以上の経験を有していること(特定活動の在留資格で、貿易その他の事業の経営を開始するために必要な準備行為を行う活動を指定されて本邦に在留していた期間がある場合は、その期間を含む)
つまり、学歴(経営関連の高度な学位)か、実務経験(3年以上の経営・管理経験)のいずれかで、経営者としての適格性を示す必要があります。
要件5:管理業務に従事する場合の報酬要件
申請人が「管理」に従事しようとする場合(自ら経営者となるのではなく、雇われて管理業務を行う立場の場合)は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが求められます。これは、外国人であることを理由に不当に低い報酬で管理職ポストに就かせることを防ぐ趣旨と考えられます。
企業が外国人を役員として迎える際の実務上のポイント
外国人を経営者・役員として採用・登用する際には、次のような点を事前に整理しておくことが重要です。
- 事業所の確保:登記上の本店所在地だけでなく、実際に事業を行うための施設が確保されているか
- 資本金・常勤職員の両立:資本金3,000万円以上という要件は決して低いハードルではないため、資金調達計画を含めた検討が必要
- 経営陣の日本語対応力:申請人本人が日本語に不安がある場合でも、共同経営者や役員に日本語対応ができる人材を配置できるかを検討
- 学位または実務経験の証明資料の準備:学位証明書や職務経歴を裏付ける資料を、外国語のものも含めて整理しておく
まとめ
経営・管理の在留資格で外国人を役員として採用したり、外国人自身に会社経営を担ってもらったりする場合には、事業所の確保、常勤職員と資本金3,000万円以上という事業規模、経営陣における日本語対応力、そして申請人自身の学位または3年以上の経営・管理経験という、複数の要件を満たす必要があります。管理業務に従事する場合は、報酬水準にも注意が必要です。
外国人の役員登用や会社設立に伴う在留資格取得については、外国人材の在留手続に詳しい行政書士までお気軽にご相談ください。