はじめに
外国人が日本で会社を設立して経営者となったり、既存の会社の管理者として働いたりするためには、在留資格「経営・管理」を取得する必要があります。この在留資格は、単に「事業を経営したい」という意思だけでは認められず、法律で定められた具体的な基準をクリアしなければなりません。
特に近年、この基準は大きく見直されました。出入国在留管理庁の資料「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(いわゆる上陸基準省令)を確認すると、経営・管理の在留資格について、令和7年10月16日から新しい基準が適用されていることがわかります。この記事では、行政書士の視点から、経営・管理ビザに求められる資本金や常勤職員の要件を中心に、最新の内容を整理してご紹介します。
経営・管理ビザとはどのような在留資格か
「経営・管理」は、日本国内で事業の経営を行ったり、事業の管理に従事したりする外国人向けの在留資格です。会社の代表者として起業する場合はもちろん、既存の会社で取締役や部長級の管理職として働く場合にもこの在留資格が必要になることがあります。
ただし、誰でも自由に取得できるわけではなく、上陸基準省令によって「事業所の存在」「事業規模」「日本語能力を有する人材の在籍」「学歴・職歴」「報酬」という複数の要件が定められています。以下、順に見ていきます。
要件1:事業を営むための事業所が本邦に存在すること
出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令によると、まず大前提として「申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること」が求められます。ただし、これから事業を立ち上げる段階でまだ事業が開始されていない場合は、「当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること」で足りるとされています。
つまり、これから起業しようとする外国人であっても、事業所として使えるオフィスや店舗などの物件をすでに確保していれば、この要件を満たすことができます。バーチャルオフィスや自宅の一室が事業所として認められるかどうかは、実務上、個別の審査で慎重に判断される点にも注意が必要です。
要件2:事業規模(資本金・常勤職員)
今回の記事で特に重要なのが、事業規模に関する基準です。同省令では、事業の規模について次の2点の両方を満たすことが必要と定められています。
- 経営又は管理に従事する者以外に、本邦に居住する常勤の職員(在留資格で在留する者を除く)が従事していること
- 事業の用に供される財産の総額(資本金の額及び出資の総額を含む)が3000万円以上であること
以前は「資本金の額又は出資の総額が500万円以上」であることと「常勤の職員が2名以上いること」のいずれかを満たせば足りるとされていましたが、令和7年10月16日施行の改正により、常勤職員の在籍と3000万円以上の資本金等の両方を満たすことが必要になりました。出入国在留管理庁の資料においても、この改正の附則で「施行日前にされた申請についての処分は、なお従前の例による」とされており、施行日以降に新規申請を行う場合は新基準が適用されることが明記されています。
この改正は、小規模・実体のない会社を経由した安易な在留資格取得を防止し、経営・管理ビザの適正な運用を図る目的があると考えられます。これから起業を検討している外国人の方や、経営者を招へいしようとしている企業にとっては、資金計画や採用計画を見直す必要が生じる可能性がある、非常に重要な改正といえます。
要件3:日本語能力を有する人材の在籍
事業の経営を行う者、または当該事業に従事する者(非常勤の者を除く)のうち、いずれかの者が「高度に自立して日本語を理解し、使用することができる水準以上の能力」を有していることも要件のひとつです。加えて、申請人が当該事業の経営を行い、または管理に従事する時点で、その日本語能力を有する者が本邦に居住していることとされています。
この要件は、経営者自身が日本語に堪能である必要はなく、共同経営者や従業員の中に高い日本語能力を持つ人材がいれば足りる点がポイントです。もっとも、実際の事業運営や行政手続、取引先とのやり取りを考えると、経営に関わる誰かが日本語で意思疎通できる体制を整えておくことは、ビザの許可可否にかかわらず実務上も重要でしょう。
要件4:学歴又は職歴
次のいずれかに該当することも必要です。
- 経営管理に関する分野、または事業の業務に必要な技術・知識に係る分野において、博士・修士・専門職学位を有していること
- 事業の経営または管理について3年以上の経験を有していること(この経験には、特定活動の在留資格で本邦において起業準備活動を行っていた期間も含まれます)
学歴要件を満たさない場合でも、実務経験が3年以上あれば要件を満たすことができる点は、実務家として押さえておきたいポイントです。なお、起業準備のための特定活動ビザで滞在していた期間が経営管理経験としてカウントされる仕組みについては、別記事「外国人起業活動管理支援計画による起業準備ビザとは」で詳しく解説しています。
要件5:報酬
申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬」を受けることが必要です。これは、外国人であることを理由に不当に低い給与で雇用することを防ぐ趣旨と考えられます。
経営・管理ビザを検討する際の注意点
以上のように、経営・管理ビザの取得には、事業所の確保、資本金等3000万円以上、常勤職員の雇用、日本語能力を有する人材の在籍、学歴・職歴、報酬水準といった複数の要件をすべて満たす必要があります。特に資本金要件が令和7年10月の改正で大幅に引き上げられたことは、これから起業を目指す外国人の方にとって資金計画の見直しを迫る重要な変化です。
また、申請時点では事業を開始していなくても、事業所の確保や具体的な事業計画があれば申請できる制度設計になっていますが、実際の審査では事業計画の実現可能性や資金の出所などが厳しく確認される傾向にあります。書類作成の段階から、事業の実態を客観的に示す資料を丁寧に準備することが許可への近道です。
まとめ
経営・管理ビザの取得には、出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令に基づき、事業所の存在、事業規模(常勤職員の在籍かつ資本金等3000万円以上)、日本語能力を有する人材の在籍、学歴または3年以上の経営管理経験、そして報酬水準という複数の要件を満たすことが必要です。令和7年10月16日の改正により資本金要件が大きく変わっているため、これから申請を検討される方は最新の基準を必ず確認しましょう。
経営・管理ビザの取得要件は複雑で、事業計画の内容によって審査の難易度も変わってきます。起業や外国人経営者の招へいをお考えの企業様は、出入国在留管理に詳しい行政書士までお気軽にご相談ください。